第2回 (2006/7/11)
榎木津礼二郎特集
「馬鹿野郎。梗子さんがどんな思いで抱いてくれといったのか解らなかったのか! あんたに接近したのだって藤牧の気を魅きたかったからとしか思えない。生憎藤牧には嫉妬心が欠落していたから深みに嵌って後戻りできなくなっただけじゃないか。あんたが歯止めにならないでどうするんだ? あんたそんなことも解らずに、抱いてくれといわれてハイハイと抱いたのか? あんたにプライドはないのか? 所詮は藤牧の代用品だったわけじゃないか!」
『姑獲鳥の夏』 京極夏彦
講談社文庫 … P496
 緋色の襦袢をはおった寝起き姿という初登場シーンから破壊神のごとく奇天烈な言動を撒き散らしてきた榎さんの思いもよらないまともな発言。しかも男女間の愛情のすれ違いについてですよ!人の心を踏みにじる行為に怒り、いつもの罵詈雑言ではなく本気で「馬鹿野郎」と言ったのです。
 傍若無人な単なる乱暴者と思っていたら、実は純粋でまっすぐ、こういう意外性に女は弱いのです。榎さんに惚れ込んでしまった瞬間でした。
ぶちにゃんこ 44歳 女性 イギリス
「何を隠そう、別に隠しちゃあいませんが、僕等は日本でも指折りの霊能者なのです。その名も御亀様。こちらがご本尊です」
『魍魎の匣』 京極夏彦
講談社文庫 … P600
 やはり名セリフの多い榎木津礼二郎から、関口を名指した一言。
自信みなぎる爛々とした顔がはっきり思い浮かびます。
 その後に続く「それでは、亀様、帰りましょう」で、もう笑いが止まりませんでした。
妙 25歳 女性 鹿児島県
「僕にも寄越せ」
『魍魎の匣』 京極夏彦
講談社文庫 … P1040
 普段から関口の事をひたすら馬鹿にしている榎木津だが、このセリフには友達(下僕?)への愛情がさりげなく込められていると思います。
 寝たまま本も見ずに、サラっとこのセリフを言ったところがまた榎木津らしい。
 きっとこれを聞いた関口も嬉しかったと思います。
 この本を読んでの感想をぜひとも榎木津本人に聞きたいところですが、きっとまともな事は言わないだろうな〜。
 それに反論出来ずにいる関君の姿もまた絵になりそう。
toshi 23歳 男性 北海道
「うわははははははっ!」
 榎木津が思い切り甲高い奇声を発した。
 今川は腰が抜ける程驚いた。唸るように残響音が渡った。
 榎木津はそれが面白いのか、うふふと笑った。
『鉄鼠の檻』 京極夏彦
講談社ノベルス … P545
 この一連の流れが凄く好きです。
 一番好きなのは最後の『うふふと笑った。』の部分なのですが、初めて読んだ時授業中だったのにもかかわらず顔がほころびました(笑)。
 榎さんみたいないい大人に使うのもアレですが、なんだかもう可愛いです。
 満足げな感じとか子供っぽさとかがこの笑みにこめられていて、数ある榎木津語録の中でも一番好きだなぁ。なのでこれに限らず、榎さんがうふふと笑うたび私は幸せな気持ちになります(笑)。
双葉 19歳 女性 東京都
「し—釈迦も弥勒も彼の下僕に過ぎない—さあ云ってみろ—彼とは誰か—」
「ぼくだ」
『鉄鼠の檻』 京極夏彦
講談社文庫 … P968
 博行が榎木津に出した公案ですね。
 考えもせず「ぼくだ」と言ってしまうところが流石「神」だなと(笑)。榎木津の暴言奇言の中では結構好きな台詞です。この人は多分考えるということをしないんでしょうね。きっと(笑)
七樹 24歳 女性 埼玉県
 このセリフを読んだたとき、改めて榎木津の凄さに感服しました。どこからそのような自信がでてくるのかがわかりませんが、榎木津なら釈迦たちより上の人物かもしれません。「ぼくだ」というただ一言のセリフに、榎木津の雄大さを感じてしまいました。この一言は、榎木津ただ一人だけに許されたセリフだと思います。これほど似合った人物はいないと思います。
葉のシズク 15歳 女性 長野県
 京極先生の作品中で、最も好きな登場人物が榎木津です。
 彼はたくさんの名ゼリフを残していますが、その中でもこのセリフは秀逸でした。この短いセリフこそが榎木津の全てを表していると思います。榎木津が好きではあったものの、どこが、と問われると言葉にできなかった私ですが、このセリフでハッキリとわかりました。
 彼の最大の魅力は奔放なところだと思います。結果を予測して動く訳でもなく、自分の思うとおりに行動し、発言し、迷いがなく、周囲を巻き込んでもどこ吹く風、それでいて結果的に人を救い、人の迷いを払う。(最終的に事件を片付けるのは京極堂なのですが。)
 私はそんな彼にどうしようもなく惹かれるのです。憧れるのです。これからも彼にはたくさん魅了されたい。
 彼の活躍を心から願っています。
 京極先生に期待しております。よろしくお願いします。
かこ 25歳 女性 東京都
「——狡いのはお前だけじゃないぞ。そんなの皆そうじゃないか。それに下僕は騙せても僕は騙せないぞ。お前——このままにしておくのは嫌なんだろ」
「放っておけばこれ以上周囲に累は及ばない」
「でもお前が嫌なんだろ」
「だから——」
『塗仏の宴 宴の始末』 京極夏彦
講談社ノベルス … P479
 ——自分が動けば犠牲者が出る。
 事件の中心地——「表舞台」に立つということを拒む中禅寺を引っ張り出すべく、彼を詰問する榎木津。ぞくりとしました。「榎さんが珍しくマジだ!(しかもマトモだ!)」というのもそうですが、この2人の間にある「絆」がかいま見えた瞬間だったから。榎さんでなければ心の奥にしまいこまれた中禅寺の本心を見抜けなかっただろうし、中禅寺はなお隠したままだったでしょう。
 お互いを認めあっている間柄だからこそ、相手に踏み込むこと、また踏み込まれることを許せる。中禅寺自身、榎さんに背を押されることを待っていたんですよね。きっと。
まくら 27歳 女性 東京都
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