第20回 (2009/5/8)
爺が選ぶ名ゼリフ——新宿鮫シリーズ編

コメント爺爺より 20回記念ということで、わがままをいって選ばせてもらったのじゃ。投稿してくださる皆さんのような立派なコメントは書けないが、たまには「爺の選ぶ名ゼリフ」にお付き合いくだされ。

「自覚のない馬鹿は、ただの馬鹿より始末が悪い」
『新宿鮫』 大沢在昌
カッパノベルス … P83

コメント爺爺のコメント 香田、お前になんぞ言われたくないわ、と思うが、真理をついていることは確かじゃのう。
  ちなみに、ワシには自覚があるぞっ!

「部屋の中を見せてもらえんかね」
「この中をですか?」
「君は馬鹿かね。中といったら部屋の中に決まっておるだろう」
『炎蛹 新宿鮫V』 大沢在昌
光文社文庫 … P103-104

コメント爺爺のコメント 「君は馬鹿かね」。榎木津あたりが言いそうなセリフで、思わずニヤリとしてしまった。セリフの主は、甲屋だがな。

「あたしは鑑識屋ですよ。そっちは?」
 藪はぼそりといった。甲屋は口もとをほころばせた。
「私か。私は虫屋だ。害虫が専門の」
『炎蛹 新宿鮫V』 大沢在昌
光文社文庫 … P229

コメント爺爺のコメント 自分の職業のことを「○○屋」と呼ぶ人間は、変わり者だがプロフェッショナル、という印象がある。この藪と甲屋が、まさにそんな感じじゃのー。

「作るのはあたし。いやがるのは、あんただよ」
『新宿鮫』 大沢在昌
カッパノベルス … P94

コメント爺爺のコメント 言ってほしいセリフ・その1じゃあ〜。
 うちの婆さんに、いやがる素振りでも見せようものなら……ああ、怖ろしすぎて想像もしたくないわい。

「うなされたら、あたしが歌ってやる、耳もとで」
『新宿鮫』 大沢在昌
カッパノベルス … P207

コメント爺爺のコメント 言ってほしいセリフ・その2! 晶のような若くて可愛いムスメ限定じゃ!
 婆さんの民謡……あ、悪夢が……怖ろしすぎて(以下同文)。

「俺はお前に、好きな歌をうたっていてもらいたい。お前は俺の女だ。だが、ロッカーとしてのお前は、お前の歌を好きな、すべての奴の女だ。ちがうか」
『新宿鮫』 大沢在昌
カッパノベルス … P107

コメント爺爺のコメント ロックシンガーを恋人に持った定めを受け入れ、男らしく腹をくくっている鮫島は、カッコイイのう。
 だが、どこか強がりを言っているようにも感じるのは、ワシの勘ぐりかのう。

 ——やっぱ、泣いた分だけ、女は強くなるじゃないですか
 ——そうだな。男はどうなんだ?
 ——女には強くなれんでしょう。仕事には強くなれるかもしれないけど
 ——そんなことを書いてた奴がいたな
 ——ええ。「泣いた分だけ、男は仕事に強くなる。女は男に強くなる」ってね
 ——結局、女の勝ちか
 ——女っていうより、晶の勝ちです
『無間人形 新宿鮫IV』 大沢在昌
光文社文庫 … P285

コメント爺爺のコメント 晶のバンド仲間・周と鮫島の会話。
  大の男がふたり、「女の勝ち」「晶の勝ち」とあっさり認めてしまうところが、情けなくておかしいんじゃ。

「誰でも毎日の生活の中に、宝石はもっている。ただ、見慣れてしまってそれが宝石であるのを忘れてしまうことがある。あの子を見慣れてしまわないようにな」
『炎蛹 新宿鮫V』 大沢在昌
光文社文庫 … P260

コメント爺 爺のコメント どこか説教くさいセリフも、「宝石」を失ってしまった桃井の口から出ると、重みが増す。
 鮫島にとっての宝石が晶なら、あなたの宝石は何かな?
 ワシの宝石は……ここはやっぱり婆さんと言っておかないと、あとあとマズイ(笑)。

「別れなさい」
 やさしい声で母がいった。
「あたしはあんたがかわいい。自分の子だから。その人の幸せより、あんたの幸せが欲しい。別れなさい。別れて」
 雪絵は無言だった。涙が滴った。
『風化水脈 新宿鮫VIII』 大沢在昌
光文社文庫 … P267

コメント爺 爺のコメント 雪絵と真壁が簡単に「ハイサヨウナラ」といかないのを知りつつも、言わずにはいられない母親の愛が心に響くのう。

「あの子があたしに何をしてくれたかじゃないのよ。あたしがあの子のために、どれだけしてあげられるかなのよ」
『屍蘭 新宿鮫III』 大沢在昌
カッパノベルス … P327

コメント爺 爺のコメント ひとつ前のセリフと似ているようで、全然違うとワシは思う。「誰々のために」というのは、えてして自己満足な場合が多い。
 この、ふみ枝のセリフに、自己満足を通り越して「共依存」の危険を感じてしまうのはワシだけじゃろうか……。

「あんたはたいして得をしないかもしれん。それでも俺があんたに話したのは、あんたは損得で動く人間じゃない、と思ったからだ」
『毒猿 新宿鮫II』 大沢在昌
カッパノベルス … P118

コメント爺 爺のコメント 人にこんなふうに言われる男になってみたいもんだが、そのぶん背負い込む苦労も多いことは、鮫島を見ているとよくわかるのう。
 確かに鮫島はカッコイイが、こんな生き方はワシにはできそうもないな。せいぜい鮫島の活躍を、婆さんと楽しむことにしよう。

「私のことがわかったと?」
「ええ。まっすぐな人だと。どこまでもまっすぐ。直線は寂しい。もし他の線と交わらなければ、ひとりぼっちだわ」
『氷舞 新宿鮫VI』 大沢在昌
光文社文庫 … P329

コメント爺 爺のコメント 一目会って、鮫島の本質を見抜いた杉田江見里。彼女もまた「寂しい直線」の人間じゃった。あまりにも切すぎる場面。
 このふたりがどうなるのか……は、小説を読んでのお楽しみじゃ!

「私は課長に御迷惑ばかりをおかけしています」
「やりたいようにやればいい。私が課長の新宿署防犯に、君がいるあいだは」
「ありがとうございます」
『毒猿 新宿鮫II』 大沢在昌
カッパノベルス … P215

コメント爺 爺のコメント  理想の上司ナンバーワン賞に輝く、桃井のセリフじゃ!

「新宿署で、最高のお巡りだ」
『新宿鮫』 大沢在昌
カッパノベルス… P271

コメント爺 爺のコメント 理想の上司に、部下が捧げる言葉。
 ワシはとっくに引退してしまったが、桃井と鮫島のような信頼関係を、かつての職場で築けていたかどうかは、ちと自信がないのう。うらやましい限りじゃ。

「そっちが俺を怒らす気なら、俺もそっちを怒らせてやる」
『屍蘭 新宿鮫III』 大沢在昌
カッパノベルス … P145

コメント爺 爺のコメント 一度でいいから言ってみたい、言ってみたいぞ! 誰にとは……怖いからここでは伏せる!

「『新宿鮫』を呼んでくれ」
『新宿鮫』 大沢在昌
カッパノベルス … P112

コメント爺 爺のコメント 「鮫」や「新宿鮫」という呼称は、シリーズのあちこちに出てくるが、ワシにとっては、真壁の言ったこのセリフがいちばん印象に残っているんじゃよ。

このウィンドウを閉じる