第12回 (2007/12/28)
来年(2008年)もよろしく!
 おあんさん、加賀さまはお優しい方でした。おあんさんと同じくらい、ほうに優しくしてくださいました。涸滝は怖いところではありませんでした。加賀さまは怖い鬼ではありませんでした。ほうは、加賀さまとお別れするのが淋しかった。でもこうしておあんさんのところに帰ってこられたから、もう淋しいなんて申しません。おあんさん、またいっしょに暮らせます。
『孤宿の人』 宮部みゆき
単行本(下巻)/新人物往来社 … P415
 予想外の展開に涙が止まりませんでした。ここ数年読んだ中での一番の名作!!なので、早く文庫化してください〜。
 もっと早く投稿したかったのですが、何しろ図書館から借りたもので、何度行っても貸出中で無かったのです……。
 それにしても……若先生素敵ですね。渡部さまも好きですが……。漱石の虞美人草が好きなもので、途中から若先生を甲野さんのイメージで、渡部さまが宗近くん、琴江さまが糸公、梶原の娘が藤尾で、保田が小野で、と勝手に当てはめて読んでいたのですが、改めて面白い本は読むスピードが違うな、と思いました。
 文庫化されたら必ず買っていつでも若先生やほうに会えるようにします。
 大人になった未来のほうにも会いたいのですが、続編が出る見込みは……無いのでしょうねやっぱり……。
ペンキチ 30歳 女性 兵庫県
コメント爺爺のコメント できれば図書館ではなく買って欲しいところではあるんじゃが。とはいうものの最近の値上げラッシュでみんなお財布状況が厳しくなっているから仕方ないのかのう。
 それはさておき、この「孤宿の人」は切ない話で純真なほうだからこそ加賀さまの本当の人となりを理解できたんじゃろう。噂なんかあてにならんから、自分で見抜く力を身につけてほしいものじゃ。
「信じるってこたァ、騙されても善いと思うこと。信じ合うッてこたァな、騙し合う、騙され合うてェ意味なんだ。この世は全部嘘だぜ。嘘から真実なんか出て来やしねえ。真実ってなァ、全部騙された奴が見る幻だ。だから—」
 それでいいじゃねェかと治平は言った。
『覘き小平次』 京極夏彦
単行本/中央公論新社 … P238
 ちょっと世界観が変わった台詞です。これを読んでハッとさせられました。信じることは時と場合によってはなかなか辛いことで、そういう時は「前向きに未来を信じよう!!」みたいな綺麗事は本当受け付けられないんですけど……。決して明るい文章ではないけれど、でも、こんなでもいいかなって思わせてくれた台詞です。生きやすくなりました(笑)
サクラヤット 19歳 女性 三重県

コメント爺 爺のコメント 騙されても善いと思っているほうが、人生は楽なのかもしれんな。肩の力をぬいて生きれたら楽しいだろうけど、そうはいかんのが人生。19歳という若さ、先は長い。息切れせんようにこんなでもいいかな、じゃな。

「人は——生きてこそ人。それは神とて同じこと。死して後、きちんと送り届けぬは礼儀知らず。死者にも——尊厳が御座居ます。旦那様、見られたくない姿を見られて悦ぶ者はおりませぬぞ。己が醜く腐って行くことが、一番嫌なは死者自身。その恥ずかしき己の様を一番見られたくない相手こそ、心底好いた——お前様であった筈」
『帷子辻』(巷説百物語) 京極夏彦
角川文庫 … P499
 死んだ女をひたずら思う笹山。しかし、それは果たして真の思いだったのでしょうか、それとも妄執でしょうか。
 いろんなことを考えさせる御行、又市の台詞。
Iryss 24歳 女性 韓国

コメント爺 爺のコメント どっちだったんじゃろな。ワシにもわからん(笑)。
 ただ又市の言うように自分の死んだ姿は最愛の人には、見られたくないものじゃよな…。死してもなお想われるというのは、幸せなことなんじゃろうかのぅ。

「個性を主張し、性差を主張し、立場を主張し、そんな主張だらけの醜い世の中に何の救いがあると云うのだ。格差をなくせ段差をなくせと叫んで、概念の化け物のようになって生きることにどんな得があると云うのだ。」
『塗仏の宴 宴の始末』 京極夏彦
講談社ノベルス … P630
 堂島大佐の台詞。丁度『ルー=ガルー』を読んでいたときに思い出しました。とくに「概念の化け物」ってとこがもろに。
らどん 18歳 男性 兵庫県

コメント爺 爺のコメント 世の中の主張大好きな人に言ってみたいセリフじゃな。
『ルー=ガルー』の中にもそんな人間が出てくるんじゃろか。らどんさんがそんな人を見かけたら「概念の化け物かっ!」って、ツッコミができるように日々練習しておいてくだされ。

「もう、今年も終わりですね」と、親父が言った。「木枯らしが、昔のことを全部、何から何まですっ飛ばしてしまって、新しい年がくるようだ」
 茂七は顔をあげ、親父を見た。親父は夜空を仰いでいた。彼の目のなかに、木枯らしに巻かれてどこかへ飛び去っていった、彼にしかわからない歳月が、そのときちかりと映ったような気がした。
『凍る月』(初ものがたり) 宮部みゆき
新潮文庫 … P207
 皆様ご存知、富岡橋のたもとの稲荷寿司屋台の親父のセリフ。渋いというか人生の深みを感じさせるというか、とにもかくにも、ずしんとくるセリフです。
 人はそれぞれ、楽しい事も悲しい事も、好むと好まざるとに拘らず、過去という代物を引き摺って生きている訳ですが、この親父殿は、「全部」「すっ飛ばして」しまいたいくらいの「昔」があるらしい。でも、すっ飛ばせないんですよね、残念ながら。だから、新年ってえのは有難い御札にちげえねえ。
 それにしても、この屋台で熱燗(やっぱ菊正宗)をきゅっと飲りながら稲荷寿司をつまんでみたいし、恐る恐る、親父さんと話(話題は何が良いかしらん)などしてみたいし、そのうち、茂七親分も現れて、「ちょいと詰めてくんな」なんてね。
 宮部さん!続きを待っているのは私だけぢゃないと思いますよ。
WILL 52歳 男性 千葉県

コメント爺 爺のコメント WILLさん、爺も一緒に一杯やりたいね。このコメントにはコメントはいらんわいな。爺のお気に入りの日本酒は、三千盛かのう。

 子に罪はない。誰が何と言おうとも、この子は俺の子、民谷の子。親の俺が育てるわ。俺が育まねばこの娘、明日にも死ぬしか道はないのだ。赤子と雖も生き延びる、天賦人権はあろう。どんな親、どんな素性であろうとも変わりはない。どうじゃ梅、善ッく見るが良い。この穢れなき小さき瞳を確と見よ。この小さきものを——お梅よそちは——殺せるか——。
『嗤う伊右衛門』 京極夏彦
中公文庫 … P290
 幼児虐待や秋田の事件のニュースを見るたびにこの件を思い出します。
 とても切ない事件は小説のなかだけであって欲しいものです。
しん 37歳 男性 埼玉県

コメント爺 爺のコメント 佐世保の事件、子供たちの受けた精神的な傷が今後どんな影響をあたえるのか。 本当に、嫌な事件が多すぎる。事件は小説のなかだけというのも、しんさんの言うとおりじゃのう。

「〜たとえ発する者に嘘偽りがあろうとも、一度発せられた言葉は勝手に相手に届き、勝手に解釈されるのです。問題はどう表現するかではない。どう理解されるかです」
『魍魎の匣』 京極夏彦
講談社文庫 … P794
 よく意図しているのかいないかはわからないが、自分の立場をわきまえず、とんでもないことを言い出す人がいる。
  周囲の人に対して影響力が強く働く人ほどこのようなことが多く、自分の勤める会社にもいる。
  そんな人に対して浴びせてやりたいセリフ。
はてなのうなぎ 33歳 男性 神奈川県

コメント爺 爺のコメント 本当は小説を読んでるときぐらい現実のことは忘れて、どっぷりその世界に浸ってほしいところじゃが…。はてなのうなぎさん、ストレス溜まってるな〜。そこでじゃ。はてなのうなぎさんヨ!その人に「魍魎の匣」を贈るのじゃ!もちろんこのセリフに付箋をつけてなッ!
 ……無責任な爺のたわごとでした。

「〜勿論石橋を叩いて落ちる関や石橋を叩き壊す馬鹿修とも違うぞ。石橋なんぞ叩きもしないで飛び越える。それが探偵だ」
『塗仏の宴 宴の始末』 京極夏彦
講談社ノベルス … P479
 思わず“確かに”と、頷いてしまった台詞です。
 素晴らしく絶妙に喩えたなぁと感心しました。
 この喩えでいくと、京極堂は「叩く様な石橋は渡らない」…とか?
暁 20歳 女性 神奈川県

コメント爺 爺のコメント じつにうまいなー! 榎木津。暁さんもうまいゾ〜!

「靴下濡れちゃった」
『鉄鼠の檻』 京極夏彦
講談社文庫 … P344
 聡明で、理性的で、思慮深い敦子ちゃん。同時に、その知性を誇示しないところ、どこか少年っぽさを残しているところが彼女の魅力だと思います。
 なので、警察を圧倒した直後のこの何とも気負いの無い子供のような言葉には、彼女の魅力がぎゅっと詰まっていると感じました。
 この台詞を読んだ瞬間、思わず「敦っちゃん…素敵!!」と呟いてしまいました。
はな 20歳 女性 福岡県

コメント爺 爺のコメント はなさんのコメントを読んで、敦子に女性ファンが多い理由がよくわかったですぞ。知性以外は、兄の京極堂とまったく似ていないところも高ポイントか!?

 榎木津が探偵になったのではなく、榎木津が探偵なのである。
『陰摩羅鬼の瑕』 京極夏彦
講談社ノベルス … P61
 いつも榎木津の暴言を楽しく読ませていただいてます。この一文を読んであの傍若無人(笑)はこれによる自信かと思いました。これからも活躍してくださいね、榎木津様!
ゆう 14歳 男性 大阪府

コメント爺 爺のコメント 榎木津はただの傍若無人ではないのじゃな。あれだけ暴言を吐いても、周囲の人間は呆れながらも結局認めているからのー。ワシも榎木津の今後の"活躍"を楽しみにしながら、バーサンと年越し蕎麦をすすることにしようかの。

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